弁護士インタビュー

ニューヨーク・オフィスでクロスボーダー案件を中心に幅広いアドバイスを提供する

逵本 麻佑子

パートナー/63期
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Q1

ニューヨーク・オフィスではどのような業務を行っているのですか。

ニューヨーク・オフィスで取り扱っている業務として最も多いのは、日本企業やその米国子会社を依頼者として米国法についてアドバイスする案件です。日本企業による米国企業への出資や買収、日本企業が米国に持つ子会社や米国での事業に対して適用される米国の各種規制、米国での訴訟や雇用に関するアドバイスなど、非常に広い分野にわたって米国法に関するアドバイスを行っています。米国法は専門性が非常に高く米国の弁護士の専門分野も細分化されているので、自分たちの米国法に関する知識を活かしつつ、その時々に求められるアドバイスによって異なる外部の米国弁護士と連携することも多いです。また、欧米企業やその日本子会社を依頼者として日本法についてアドバイスする案件も多く取り扱っています。この場合も、欧米の企業による日本企業への出資や買収、日本の子会社や日本での事業に適用される規制や労働法に関するアドバイスなど、様々な分野のアドバイスを行っています。

そのほか、東京オフィスの弁護士から、案件の中の米国法に関する部分について協力を求められたり、欧米の依頼者に対する日本法に関するアドバイスで、その分野を専門とする東京オフィスの弁護士に協力を求めたり、東京オフィスとニューヨーク・オフィスで協働してアドバイスを提供する場合もあります。

Q2

ニューヨーク・オフィスで勤務することになったきっかけを教えて下さい。

ニューヨーク・オフィスでは、通常2年間の任期でロースクールを卒業したアソシエイトが勤務しており、私も2016年にロースクールを卒業した後、当初は2年間の任期の予定でニューヨーク・オフィスでの勤務を開始しました。2年間の勤務経験を通じて、日本法と米国法の違いを踏まえつつ様々な分野のアドバイスを日本及び欧米の依頼者に提供するというニューヨーク・オフィスの業務に面白みを感じ、ニューヨーク・オフィスでの勤務を継続したいと思うようになりました。事務所にそのような希望を伝えたところ、丁度事務所がニューヨーク・オフィスの人員を拡大している時期であったこともあり、希望通り、勤務を延長することができました。その後も、ニューヨーク・オフィスで事務所の米国展開に携わっていきたいという思いが強くなり、ニューヨーク・オフィス所属のパートナーになりました。

Q3

アメリカには沢山の弁護士がいますが、日本の弁護士が活躍できるものなのでしょうか。

日本の企業が依頼者となる場合、当然ながら日本語でのサービスを提供できるというのは大きな強みです。英語での日常的なコミュニケーションには支障がない依頼者であっても、難解な法律の解釈については日本語での解説が必要という場合は多くあります。また、米国の法律事務所の選定についても、米国は州によって法律が異なり、また、先ほどお伝えしたとおり米国の弁護士の専門分野も細分化されているので、案件の種類・規模に応じて、ニューヨーク・オフィスが長年培ったネットワークを活かして、適切な米国の法律事務所を選定しつつ我々がとりまとめをして日本語でアウトプットをする、という関与の仕方もあります。米国の法律事務所で、日本人あるいは日本語の堪能な弁護士が所属している事務所も複数ありますが、日米両方の弁護士資格と実務経験を持つ弁護士というのは少なく、日本と米国の文化・法制度や実務慣行の違いを理解しながらアドバイスを提供できるというのは他の米国の法律事務所にはない強みだと思っています。

Q4

留学前に行われていた業務と現在の業務との関係を教えて下さい。

留学前はM&Aが業務の中心で、クロスボーダーのM&Aにも多数関わっていました。入所してから最初に配属されたのがM&Aを中心とするグループで、所内のチームメンバーや依頼者と協力して案件を成功に導くというM&A案件が自分に合っていると感じていました。現在も、日本企業による米国企業の買収や出資、欧米の企業による日本企業の買収や出資といったクロスボーダーのM&Aを業務の中心にしています。

また、労働法に興味があって留学前に買収対象会社の人事デュー・ディリジェンスを多く取り扱っていたことから、ニューヨーク・オフィスに来てからも労働法関連のアドバイスを多く行っています。労働法は、各種法律の中でも日本とアメリカとで大きく法制度が異なるので、依頼者が何を前提にアドバイスを求めているかをよく理解しておく必要があり、日米双方の法制度を理解している強みが特に発揮できる分野だと思います。

クロスボーダーのM&Aと労働法については、留学前の日本での充実した実務経験を活かしながらアドバイスできていますが、これらの他にも、ニューヨーク・オフィスでは各弁護士が様々な分野を横断的に取り扱っていますので、一般的な商取引契約に関するアドバイス、訴訟対応、輸出管理規制、データセキュリティなど、様々な分野のアドバイスを提供しています。これらの分野は、必ずしも私自身が留学前に深く携わっていた業務分野という訳ではありませんが、それらを多く取り扱っていたニューヨーク・オフィスの弁護士と一緒に、留学前に培った実務経験を使いながら、価値あるアドバイスが提供できているのではないかと感じています。

Q5

英語がネイティブレベルでないとニューヨークでの勤務は難しいのでしょうか。

私は留学するまでずっと日本で生まれ育っており、海外で生活をした経験がなく、留学前の段階で英語が特に優れているという訳ではありませんでした。ニューヨーク・オフィスで勤務する他の日本人弁護士も同様で、帰国子女や英語がネイティブレベルでなければニューヨーク・オフィスでの勤務が難しいというものでは全くありません。日々の業務の中心は英語でのメールや書面のレビュー、会議などですので、英語が得意な方はそれを十分に活かすことができますが、そうでない方でも、東京オフィスでのクロスボーダー案件への関与や留学を経て英語力を伸ばし、ニューヨーク・オフィスで活躍することは十分に可能です。

Q6

留学で得た経験について教えて下さい。

もともと海外旅行は好きでしたが、留学前は全く海外に居住した経験がなく、米国に来て日本との文化や考え方の差を肌で感じることができ、非常に新鮮でした。ロースクールでは、世界中の様々な国から来た学生と交流することができ、ここでも色々な価値観・多様性に触れることができました。ロースクールが学生同士で交流できるようなイベントを多数企画してくれていて、学生同士が自宅で出身国の料理を振る舞ったり、皆で旅行に行ったりと、充実した毎日を過ごしていました。今でもロースクールの友人とは交流が続いていて、旅行先で友人と会ったり、ニューヨークに訪れた友人と会ったりしています。授業では、もともとの業務と関わりの深い米国の会社法、契約法や労働法の授業の他、ビジネススクールと合同で行う交渉術の授業なども取っていました。全世界から来ている学生とプレゼンテーションの準備をしたり議論したりするのは大変でしたが、英語力の向上には役立ちましたし、様々な角度から多様な意見を聞くことができ、弁護士としても、また一人の人間としても成長できるよい経験になったと感じています。

Q7

育児と仕事をどのように両立されているのですか。

私はニューヨーク・オフィスでの勤務を開始してから半年後に出産して、5ヶ月ほど産休を取った後、ニューヨーク・オフィスに復帰しました。復帰後、仕事の関係で主人がニューヨークにおらずワンオペ育児をしていた期間もあり、仕事との両立は大変でしたが、朝早めに仕事を開始して、保育園のお迎えに間に合うようオフィスを出て、子供が寝た後に家で仕事を再開するという形にしています。一定の時間オフィスにいなければならないという制約はないので、子供の状況に応じて、午前中は自宅で仕事してからオフィスに行ったり早めにオフィスを出たりということは自由にやっています。また、職場の同僚も子育てに配慮してくれて、私が子供の世話のために対応できない時間帯は他の弁護士がカバーするなど柔軟に対応してもらっています。リモートアクセスの環境が整っており様々なデバイスを使用して仕事ができるようになっていますので、うまく時間を見つけながら、タブレット端末を使ってメールや資料のチェックをよく行っています。

Q8

これから弁護士を目指す方へのメッセージをお願いします。

これから弁護士になる方には、興味を持ったことに積極的にチャレンジし、色々な経験をすることを心がけていただければと思います。今後日本企業の海外進出がますます進む中で、海外オフィスの重要性も大きくなってくるものと思いますが、ニューヨークに限らず海外オフィスで勤務するというユニークなキャリアの選択肢もあります。長島・大野・常松法律事務所は、個人の自主性を尊重し、自分がやりたいと思ったことには何でもチャレンジさせてもらえる環境・風土の整った事務所ですので、是非皆さんに興味を持ってもらえればと思います。

プロフィール

逵本 麻佑子

63期 パートナー

2010年10月入所。1985年生まれ、兵庫県出身。2016年5月にHarvard Law School卒業後、同年8月からニューヨーク・オフィス勤務開始。2021年1月からニューヨーク・オフィス所属パートナー。

プロフィール詳細

学歴/職歴

  • 2008

    京都大学法学部卒業

  • 2010

    長島・大野・常松法律事務所入所

  • 2016

    Harvard Law School卒業(LL.M.)

  • 2016-

    長島・大野・常松法律事務所ニューヨーク・オフィス(Nagashima Ohno & Tsunematsu NY LLP)勤務

  • 2021-

    長島・大野・常松法律事務所ニューヨーク・オフィス(Nagashima Ohno & Tsunematsu NY LLP)パートナー