同室パートナー×アソシエイト対談

仕事を楽しめる環境を作ることが同室パートナーとして最初の役割

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対談者

  • 水野 幸大

    アソシエイト/73期
    2021年現在、粟谷弁護士と同室で執務。独占禁止法や薬事ヘルスケア分野など、幅広い業務に携わる。
  • 小泉 里緒子

    アソシエイト/70期
    入所後約6ヶ月間、粟谷弁護士と同室で執務。業務分野は、M&A・コーポレート。
  • 粟谷 翔

    パートナー/60期
    M&A、薬事・ヘルスケア法務及び新規事業支援を中心として、企業法務全般にわたりリーガルサービスを提供。

「同室」で仕事をし始めたときの印象は?

粟谷

今日は、私の同室アソシエイトのお二人と一緒に、NO&Tの新人弁護士育成制度の1つである「同室パートナー制度」(※)についてお話ししていきたいと思います。

私がパートナーになって今年で5年目ですが、その間、6名のアソシエイトと同室を終え、みんな立派に巣立っていきました。いま同室の水野さんで7人目です。小泉さんは2人目の同室アソシエイトですが、今一緒に仕事をすると、依頼者対応や後輩へのアドバイス含め、成長したなぁと感慨深いです。

小泉

そのように言っていただけて嬉しいです。配属当初は案件の中で担うべき仕事の内容はもちろん、自身がどのくらい仕事を受けても大丈夫なのかを含め、右も左も分からない状態でした。そういった状況で、色々と相談できるパートナーが同室として隣にいてくれたというのは、やはりとても心強かったです。

水野

まさに数ヶ月前の私と同じですね。私はコロナ禍での同室制度というものがどういうものなのか、正直よくイメージを掴めていなかったのですが、実際始まってみると、出勤時であろうと在宅時であろうと、やはり随所で粟谷さんに目をかけていただいているなと感じます。出勤時はもちろん直接、在宅時でもウェブ会議を利用して密にやりとりできるので、コロナ禍で場合によっては孤独になってしまう新人にとってこの「同室パートナー制度」はありがたいものだなと思います。

やはり「同室パートナー」の仕事が中心なのでしょうか?

粟谷

配属直後はまずは一緒に仕事をしようというのはありますが、仕事のポートフォリオとしてはどうですか?水野さんはすでに色々なパートナーと仕事していますよね。

水野

そうですね。粟谷さんとご一緒している仕事は、現状3~4割といったところでしょうか。時期によっても違うので、「今週は粟谷さん以外のパートナーとの案件の稼働だけだったな」ということもあります。

小泉

私は入所して約1年は粟谷さんの仕事が多く、1年目の終わりころから一緒に仕事をするパートナーがどんどん広がっていきました。

粟谷

「同室制度」というと「同室パートナーとだけ仕事をする制度」という誤解をされがちですが、そんなことはありませんよね。

志望分野と「同室パートナー」の業務のミスマッチはないのでしょうか?

粟谷

私はM&Aが業務の中心ですが、水野さんはもともと独禁法志望でしたよね。

水野

そうなんです。私は、独禁法の仕事を志望して入所したのですが、M&Aが中心の粟谷さんの同室となることが決まって、最初は「これからどんな案件が振られるのだろう」と心配になりました。ですが、配属初日に言われた「水野君には独禁の案件が来るようにしてあるから!」という粟谷さんのお言葉通り、粟谷さんを通じて様々なパートナーの独禁法案件に入れていただき、今では企業結合案件・調査案件を問わず、多くの独禁法案件を担当しています。

粟谷

水野さんの志望は事前に分かっていたので、独禁法分野のパートナーたちと事前にアサインメントの配分について調整をしておきましたからね。もともとの志望分野以外の業務領域についても聞かせてもらえますか。

水野

はい、配属された際に粟谷さんが製薬会社のお仕事も多いと伺い、私自身就職活動の際には全く意識していなかったものの、親族が薬事関連の仕事をしている影響もあって自分がその分野にも興味を持っていることに気がつきました。そのことを粟谷さんにお話しして以来、薬事・ヘルスケア系の案件に多く入れてもらっています。

もし、元から志望していた独禁法だけに注力する環境に身を置いていたら、自分が潜在的に興味を持っていた薬事・ヘルスケア分野の面白さに気づけていなかったと思うので、知らない分野を取り扱うパートナーの同室となったことが自分の可能性を広げる貴重なチャンスだったと今では考えています。

粟谷

小泉さんは、逆にご自分の第一志望と私の業務分野が割と合っている形での同室でしたよね。

小泉

私の場合、正確には実務に就く直前まで特定の分野への強い志望というものがありませんでした。就職活動中は弁護士といえば訴訟というイメージしか持てなかったので、訴訟志望ということでお伝えしていましたが、入所後の新人研修時に同期と話したりする中で、最終的にM&Aをやってみたいと思うようになりました。それから、高校時代に海外留学をして英語を使った仕事をしたいと思っていたので、最終的にクロスボーダーM&Aに一番関心を持っている状況で育成グループへの配属を迎えました。入所して同室になるまで粟谷さんとは面識もなかったのですが、クロスボーダーM&Aが多い粟谷さんの同室になり、M&A取引の面白さを学んできた結果、自分にとってはこの分野が一番合っていたと感じています。志望分野について、実務に就くまで時間をかけて柔軟に決めることができたのは、今思えば非常に重要なことだったように思います。

粟谷

他のパートナーとの仕事はどんな感じですか。

小泉

NO&Tでは特定のパートナーと仕事をすることが強制される空気は全くなく、むしろ色々なパートナーと仕事をすることが推奨されています。私自身は、特に1年目の終わりくらいの時期から、多くのパートナーと仕事をしています。パートナーのスタイルはそれぞれ異なるので、色々な方とお仕事をさせていただくことで、アドバイスの内容から、案件の進め方、依頼者との関わり方など、様々なスタイルがあることを学ぶことができていると思います。

粟谷

同じ分野でもパートナーによって色々なスタイルがありますよね。他の分野の仕事だとなおさらですよね。

小泉

はい、例えば、粟谷さん以外のパートナーと、契約解釈を巡る紛争案件に対応したこともあります。自分がこれまで携わってきた分野でなく、仕事でよくご一緒しているわけでもないパートナーとの仕事でしたので、戸惑いや緊張感もありましたが、契約書を巡る紛争への対応を経験したことで、その後M&A取引の中で契約書を作る際にも、将来紛争が生じた場合に問題がないかをリアルに想像しながらドラフトできるようになりました。今お話したのは紛争案件の例ですが、ほかにもプロジェクトファイナンス、IT・テクノロジー、労働分野など、様々な案件に携わり、色々なパートナーと仕事をしています。

粟谷

業務の中心的な分野以外の仕事をした経験が結果的に中心的な分野での成長につながることが多いので、専門性や個性の異なるパートナーが集まっている育成グループ内のパートナー間で密に連携して、アソシエイトひとりひとりが多様性のある経験を積めるように心がけています。

パートナーと「同室」での日常は、どんな雰囲気なのでしょうか?

粟谷

入所後いきなり10年以上キャリアが上のパートナーと同室になることにプレッシャーを感じる人もいて当然だと思いますが、実際どうでしたか?

水野

私は、配属の際に初めて知り合ったといった感じでしたので、配属後しばらくはやはり少し緊張しました。

粟谷

そうですよね。その後は変わっていきましたか?

水野

今でも、もちろん仕事は緊張感を持って携わっていますが、私が最近ゴルフデビューをしたということで、執務室で一緒にパターの練習をしたり、所内にある卓球台で卓球をしたりするうちに、パートナーが隣にいることによる緊張感は相当薄れてきたと思います。

小泉

私も、真面目なアドバイスを受けつつ、パートナーと気さくに会話し易いというのも「同室」の良い点だと思います。私は好きなアーティストの写真を執務室に飾っていたのですが、それを粟谷さんに見つけられて、怒られるかと思いきや、そこから意外と話が盛り上がってとても和んだのを覚えています。

粟谷

三代目J Soul Brothersのオーディションの話、しましたね(笑)入所当初は人間関係面で一番プレッシャーや戸惑いが大きい時期だと思いますので、まずは事務所に居場所ができて、仕事を楽しめる環境を作ることが同室としての最初の役割だと考えています。そのうえで、成長の糧となるチャレンジングな経験を重ねていく機会を提供するというのが次の役割です。小泉さんとは、配属後わりとすぐに複雑なクロスボーダーのM&A案件を一緒に対応しましたよね。

小泉

はい、希望していた分野の仕事にいきなり関わる機会が持て嬉しかったのですが、案件が始まってみるとついていくのも精一杯で、辛いときもありました。ただ、どんな状況でもすぐに同室の粟谷さんと話ができたことで、なんとか案件についていくことができたと思っています。M&Aが本当に忙しい時期は、わざわざ時間をとってもらうのも憚られるくらい慌ただしいのですが、同じ部屋であれば粟谷さんが手元で自分の作業をしながら私に口頭で説明や指示をしてくれるので、案件の進捗をリアルタイムで追いながら学びつつ、自分自身もチームに貢献できたと思います。

粟谷

その案件では1年目の終わり頃に一人で海外出張にも行ってもらいました。

小泉

はい。あの時は、弁護士として自分一人で依頼者と一緒に海外で会議に出るということで、チャンスを頂いた喜びよりも不安の方が大きかったです。出張前に入念な準備をして渡航し、無事に仕事を終えて帰国したときは本当にほっとしました。

粟谷

重責だったと思いますが、無事仕事をやり遂げたことで大きく成長する契機になったと思います。水野さんも、まだ配属されて半年も経っていませんが、すっかり事務所に馴染んですでに最前線に立って仕事をしていますよね。

水野

最前線かは分かりませんが、確かに配属1~2ヶ月後から裁判所の期日に一人で出ています。最初の期日の前には、粟谷さんに期日で話す内容をチェックして貰ったりしましたが、以降は基本的に一人で期日に出ていますし、同室であるからこそ、パートナーが「ここまでならば一人でやらせても大丈夫」というような判断をしてくれているのではないかなと勝手に感じています。

粟谷

そうですね、パートナーとしては、何もかも指示するのが良いとは思っておらず、アソシエイトがチャレンジできそうなことは思い切って1人の弁護士として判断・実践してみてもらい、それを後ろで見守ることも重要と考えています。そして、普段から横で仕事ぶりを見ているからこそ、「ここまでならギリギリできそうだ」という判断を積極的にできるところがあります。小泉さんの海外出張も、水野さんの訴訟期日も、結果的にちゃんとうまくいきました。

在宅勤務下でも「同室パートナー制度」は機能しているのでしょうか?

粟谷

話は変わりますが、コロナ禍以降事務所の執務体制も変わって、在宅勤務の日も増えましたが、その影響はありますか。

水野

私は、全く強制されているというものではありませんが、基本的に出勤をしています。ちなみに私の同期を見ると在宅勤務をしている人も結構います。私は出勤していることもあり、粟谷さんとはほぼ毎日実際にお会いしていますので、成果物のレビューなどは直接対面で受けることが多いです。

ただ、もちろん在宅下でレビューを受けることもあり、その際はTeamsのオンライン会議などで、画面共有をしつつ、修正点や課題を教えてもらっています。

また、在宅環境でも、やはり同室パートナーとは定期的に仕事をしているので、必然的にやりとりは増えますし、その中で同室パートナー以外のパートナーとの案件の相談や、事務所での過ごし方についての雑談、日常会話なども弾み、同室パートナーの存在を知識面・精神面のよりどころとして、日々執務している実感があります。自分一人に注目してくれるパートナーが制度上存在しているというのは、入所前に思っていたよりもずっと心強いものでした。

「同室」終了後は関係性に変化はあるのでしょうか?

粟谷

「同室」を卒業して個室に移ると、やっぱり開放感を感じましたか?

小泉

もちろん開放感はありますね。同室を出た後は、同世代の先輩方や後輩と同じ部屋になり、自分の役割の変化も感じました。同室時代はパートナーに教わる立場という感覚でしたが、今度は自分が後輩から質問を受ける立場になり、別の意味での楽しさややりがいがあります。

水野

同室パートナーとは、今でも案件や同室飲み会で一緒になることが多いですよね。

小泉

そうですね。同室を終えてもう3年以上経ちますが、今でも案件でご一緒することは多く、親身なアドバイスを頂く関係は変わっていません。仕事以外でも、留学先の相談等もしています。

今では水野さんを含め、4人も同室の後輩ができたので、粟谷さんが自分にしてくれたのと同じように、自分も後輩と関われたらと思っています。

水野

私は、配属後に早速「同室飲み」を企画していただき、「粟谷同室」の先輩方と大分打ち解けることができました。おかげでその後、その先輩方と案件でご一緒する際、過度に緊張せず、執務に集中することもできました。このような「同室飲み」ではアソシエイトの中での共通の愚痴なども言い合えますので、先輩に共感して貰うことで、気が楽になり、たまにある気の重い案件に取り組む際のモチベーションになっています。

粟谷

私も、十数年前に入所した際に同室になった先輩パートナーと今でも親しくしており、仕事の相談に乗ってもらうこともあります。今は一緒に仕事をすることは減り、ゴルフや飲み会での交流の方が多いですが、同室パートナーから学んだことの多くが、いま仕事をするうえでも私の指針となっています。私がパートナーとして同室となったアソシエイトの皆さんにも、私の下で働く戦力としてではなく、今後私を超える弁護士となっていってくれることを期待しています!

「同室パートナー制度」は今後も続いていくのでしょうか?

粟谷

今日は「同室パートナー制度」について語り尽くしましたね。改めて、この制度について最後に一言お願いします。

小泉

入所後数年経った今でも、同室時代に粟谷さんがされていたことを思い出して新たな発見や学びにつながることもありますので、長期的な視点からも有意義な教育制度だと思っています。この制度が今後も続いていってほしいという思いで、今日はお話ししました。

水野

私はまだ入所して数ヶ月ですが、密にコミュニケーションを取れることが確約されているパートナーが少なくとも一人決まっていることで、そのパートナーとの案件以外の相談や、時には愚痴なども話すことができ、一人で問題やストレスを抱え込むといったことが極めて起こりづらい環境になっていると実感しています。

粟谷

パートナーの立場から言うと、もちろん負担も多いのですが、やりがいもありますし、成長を遂げた同室アソシエイトに日々助けられています。何より、この制度がこれまで何十年も続いてきて、所内のほとんどのパートナーがアソシエイトの立場でもこの制度を経験してきたことで、新人教育に注力するという精神を共有できていることがNO&Tの教育体制の強みです。今後も、この精神をもってNO&Tに加わってくれる新しい仲間の成長を後押ししていきたいと思います。