弁護士インタビュー
企業への出向経験を活かして、専門性の高い分野に挑戦していく
宮下 優一
取り扱っている業務分野について教えてください。
私は、企業による資金調達をサポートする分野、いわゆる「ファイナンス」分野に多く携わっています。ファイナンスの手法には多くの種類がありますが、株式や社債などの証券を発行することにより投資家から資金を調達する「キャピタルマーケット」分野を特に多く取り扱っています。
キャピタルマーケット案件でどのようなことをやっているのかといいますと、依頼者である企業、証券会社、投資家から相談を受け、どのような枠組み・スケジュールで案件を実施するかを依頼者と一緒に検討したり、投資家に対する情報開示の資料の作成や契約交渉などを行います。無事に調達が完了した後も事後的な手続をサポートしています。
「ファイナンス」や「キャピタルマーケット」と聞くと、何となくとっつきづらいイメージもあります。携わるようになったきっかけは何だったのでしょうか。
当事務所で扱っている企業法務は専門性が高いものが多いため、企業での社会人経験なくキャリアをスタートする方にとっては最初はイメージが湧きづらいという面はあると思います。私自身も学生時代に「ファイナンス」と聞いてもローンくらいしか思いつきませんでしたし、ましてや「キャピタルマーケット」という分野が存在することも知りませんでした。具体的にどのような分野の仕事をするかは実際に入所してみないと分からないと思い、入所後は幅広い分野の案件に関与しました。
そのような中で、財務状態が危機に瀕している企業を資金・資本面で救済する案件や、景気が回復した局面で企業の成長資金を確保するために調達を行う案件など、象徴的なキャピタルマーケット案件にいくつか携わる経験をし、次第にキャピタルマーケット分野に興味を持つようになりました。
業務のやりがいと心がけていることについて教えてください。
業務のやりがいは、依頼者に感謝していただくことです。
依頼者から感謝されるようなサービスを提供できるよう2つのことを心がけています。
1つ目は、依頼者のことをよく知ることです。例えば、株式を投資家に対して広く発行する案件では、株式に投資することは、その企業のオーナーとして企業に投資することを意味しますので、投資判断の前提として、投資家に対してその企業の事業内容やリスクなどを分かりやすく丁寧に情報提供する必要があります。どのような情報を提供するのが適切かをアドバイスするためには、まず弁護士自身がその企業のことをよく知る必要があります。私はその企業がどのようなビジネスを行なっているのかを十分にイメージすることを心がけています。
2つ目は、専門性を高めることです。キャピタルマーケットの分野は、それを扱う法律事務所や弁護士の数が少なく、本を読んだり裁判例を調べても知りたいことが見つからないことがほとんどです。当事務所はこの分野の歴史が長く、所内に知見が蓄積されている上に、先輩後輩問わず気軽に相談できる環境に恵まれています。また、私は出向していた証券会社のエクイティ・キャピタル・マーケット部の現場で、豊富かつ最先端の実務を経験させていただきました。
証券会社へ出向することになった経緯を教えてください。
私は、2015年夏からアメリカの大学と法律事務所で留学・研修し、その後2016年11月から1年間、大手の日系証券会社のエクイティ・キャピタル・マーケット部に出向しました。
事務所に入って数年間実務を経験したタイミングで留学・研修・出向の機会があるのは自分のキャリアを考える上で有意義です。私の場合は、留学直前の2年間で、株式のグローバルオファリングという、世界の投資家に対して株式を発行する案件に多く関与していました。それらの案件を通じて感じたのは、弁護士が関わらない部分の奥深さです。日本においては、証券を頻繁に発行する企業は少なく、また、証券を投資家に広く販売する証券会社の数は限られているため、キャピタルマーケット案件の知見は証券会社に集中していると思い、案件数の豊富な証券会社で経験を積みたいと考えるようになりました。証券会社内には色々な部署がありますが、株式を含むエクイティ案件の提案・執行を行うエクイティ・キャピタル・マーケットの部署に身を置きたいと考えました。
そして、以上の私のニーズと、受入側のニーズの双方が合致する、希望通りの出向が実現しました。出向先からの出向要請が先行してそれに応じるケースも多くありますが、私の場合は自分の希望に合う出向先を発掘するというケースであり、事務所のサポートなくしては実現することは難しかったと思います。
出向の経験を通じて得られたものを教えてください。
出向の成果は大きく分けると2つあったと考えています。
成果の1つ目は、キャピタルマーケット分野の専門性を磨くことができたことです。案件になる前の段階でどのような提案活動を証券会社が発行会社に行っているのか、また、案件化した後も、投資家とどのように対話して、どのように証券の価格が決まっていくのかといった、社外の弁護士として関与するだけでは見ることができない案件の奥深いところを現場で体験でき、自分の理解を深めることができたことは貴重なものでした。
成果の2つ目は、出向先の様々な部署の方と交流することができたことです。会社組織に所属し、組織内での業務分掌に沿って全体最適で会社として活動することを通じて、各部署がどのように動いているのかを知り、また、多くの方々と出会って深い人間関係を築くことができたということも、出向経験で得た大きな財産です。
弁護士を目指す方へメッセージをお願いします。
弁護士になる前、あるいは、法律事務所に入る前の段階で、「出向」という法律事務所を一旦離れる経験についてイメージを持つことは難しい場合もあるのではないかと思います。出向に限らず、留学や海外研修も含め、外の扉を開いて経験を積むことは、弁護士としての深さや幅を広げる貴重な経験です。弁護士を目指す方には、ぜひ自分の可能性を切り開いていただきたいと思います。
長島・大野・常松法律事務所は、そのような経験を積みたいと考えたときに、それを強力にサポートできる事務所です。
プロフィール
宮下 優一
2010年12月入所。国内外の資本市場における証券発行・売出し、新規株式公開、金融規制法、コーポレートガバナンスその他の企業法務全般にわたりリーガルサービスを提供している。
プロフィール詳細学歴/職歴
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2007
大阪大学法学部卒業
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2009
京都大学法科大学院修了
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2010
長島・大野・常松法律事務所入所
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2016
University of California, Los Angeles, School of Law卒業(LL.M., specializing in Business Law – Securities Regulation Track)
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2016
Thompson Hine LLP(New York)勤務
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2016~2017
SMBC日興証券株式会社 資本市場本部 エクイティ・キャピタル・マーケット部勤務
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2020~
長島・大野・常松法律事務所パートナー